技法を尽くし、虚飾を削ぎ落とした果てに辿り着く、無の領界。
そこには、己を誇示する「位(格付け)」も、観る者を威圧する「風(演出)」も存在しない。
かつて私たちは、焔という名の武器を手に、位という檻を焼き払う戦いを続けてきた。
だが、辿り着いたのは静寂。
真の強固さとは、もはや戦う必要すらなく、ただ静かにそこに「在る」ことなのだ。
石の理性、猛火の規律
耀変(ようへん)の色彩は、作為からは生まれない。
窯の極限状態で、自我を消滅させた焔の揺らぎが、偶然という名の必然を連れてくる。
それは「美」という脆弱な言葉を超えた、不可逆な未来の記録である。
・無位: 格付けを捨て去ることで、万物の色を宿す。
・無風: 演出を排することで、観る者の深淵を映し出す。
数字で測れる「位」などは、移ろいゆく風に過ぎない。
風が止まった時、そこに残る「虚空」こそが、真右エ門が追い求めた深淵。
精神のインフラとしての「器」
誰が私をどう評そうと、それはもはや私の預かり知らぬこと。
私はただ、この静寂の中で器を醸す。
「無」という名の、最も贅沢な精神のインフラとして。
地位も名声も、もはや私を縛ることはできない。
私は、ただの私であるという「至福」の中にいる。
銀座 蔦屋書店に現出したのは、私の作品ではない。
それは、貴方の心の中に広がる「無位無風」の景色、そのものだ。
不可逆な未来の定礎(Cornerstone)。
過去の継承ではない。この惑星に刻まれる「石の理性」の記録。
真右エ門窯 馬場 泰嘉

