伝統工芸の継承という道は、先代が築き上げた「名声」という重き器に、自らの実存をいかに注ぎ込むかという、終わりのない問いの連続です。
真右エ門窯・馬場泰嘉の歩みは、その歴史的重圧を「重荷」としてではなく、自らを律し、高めるための「試練」として受け入れることから始まりました。
私が志すのは、単なる技法の模倣ではありません。
それは、数千年の歳月を抱く「石」と、極限の「焔」が織りなす対話を、現代の「哲学」という言葉で再翻訳し、人々の精神に寄り添う新たな価値を創出すること。
この動的な知的労働こそが、真右エ門窯の真髄です。
目次
【真右エ門窯が提唱する、三つの調和】
- 精神の調律としての技術:
偶然が生む「耀変」の色彩を、単なる鑑賞の対象に留めず、現代を生きる人々の心を鎮め、調和をもたらす「アクティブ・インフラ(動的な基盤)」へと昇華させます。 - 価値の原点への回帰:
既存の販路や名声に安住することなく、常に「工芸が果たすべき真の役割」を世界に問い続けます。器を単なる装飾品から、人生の質を高める「実存の定礎」へと変革してまいります。 - 創造的承継:
先代の成功を礎(いしずえ)としながらも、それに甘んじることを自らに禁じ、「陶芸哲学者」としての独自の視座を確立。過去と未来を繋ぐ新たな軸として、真右エ門という称号を現代に再定義します。
馬場泰嘉にとって、真右エ門という名は「享受すべき資産」ではなく、自らの思想を具現化し、社会へ貢献するための「重き責務」に他なりません。
名声にふさわしい「心の位」を磨き続けること。
その誠実な研鑽から生まれる一服の器こそが、次代の工芸の基準点となると信じています。

