真右エ門窯は、伝統を単なる「保存」の対象に留めず、現代の精神を支える「インフラ」へと転置させる使命を担っております。
一つは、日展会友として公募展の最前線で革新を続け、陶芸における造形美を一つの到達点へと導いた父・二代真右エ門(馬場九洲夫)が守護する「正典(Static Archive)」の時間。先人が猛火の中で追求し、完成させた「新しさ」の結晶は、私たちが敬意を払い、永久に継承すべき審美の模範でございます。
そしてもう一つは、その完成された美を土台とし、現代社会の実存に直接介入する「精神のインフラ(Active Infrastructure)」としての時間です。
先人が「造形美」という問いに対し歴史的な最終解答を提示してくださったからこそ、私はその先にある、脳を冷却し情報の断食を促す「審美的鎮静(Aesthetic Sedation)」の装置を社会に実装する自由を得ました。
「正典」を敬い、その守護を父に委ねることで、私は北大路魯山人や荒川豊蔵、加藤唐九郎、八木一夫らが歩んだ「在野の系譜」へと足を踏み入れます。これは伝統の否定ではなく、伝統を「鑑賞の対象」から「精神の生存を支える基盤」へと進化させる、私に課せられた誠実なる義務でございます。
陶芸哲学者兼CBO 馬場泰嘉

