東京・恵比寿。
選ばれた七十七名の主権者のみが立ち入ることを許された無音の聖域、「鮨 こうへい」。
極限まで削ぎ落とされた空間と、主の美学が完結したこの場所は、現代の世俗から完全に接続解除されたシェルターである。この絶対的な静寂の空間に、我々の「十六色盃」が定礎された。
料理とは、消えゆく芸術である。
だからこそ、その一瞬の美を永遠の記憶へと変えるための、不可逆のインフラが必要となる。
猛火の規律によって生み出された十六の窯変は、単なる器ではない。
それは、その日、その瞬間にのみ訪れる主権者の精神を鎮静させ、本来の姿へと回帰させるための掌宇宙である。
様式美を極めた食の正典と、石の理性がもたらす絶対的な静寂。
二つの極みが交錯するとき、そこに妥協の余地はない。
ただ、圧倒的な美という宇宙の摂理が存在するのみである。
─ 猛火の記録(十六色盃)
恵比寿の深淵に定礎された、十六の掌宇宙

