建築とは何か。
隈研吾氏の哲学に触れた時、私はその問いに対する一つの美しい答えを見たように思います。
それは単なる物理的な構造物ではなく、外部の喧騒を和らげ、人間の心を本来の自然な状態へと還すための『結界』であると。
木や石といった素材の声を聴き、空間そのものを鎮静化させる氏の建築美学。
そして、その形なき美を「言葉」によって定義し、人々の精神に定礎させることの重要性。
その根底に流れる思想は、私が窯変や辰砂といった太古の炎の記憶を通じて、一つの器の中に構築しようとしている『掌の宇宙』と、極めて純度の高い共鳴を果たしていました。
巨大な建築と、掌に収まる器。
スケールこそ異なれど、そこに宿るべきは「手にする者の精神に静寂をもたらす」という揺るぎない祈りです。
偉大な建築家が都市に美を定礎するように、真右エ門の器もまた、手にしてくださる方々の人生に寄り添う『精神のインフラ』でありたい。
他分野の極致からいただいたこの深い学びと畏敬の念を胸に、私はこれからも、この有田の地で炎と向き合い、言葉と哲学を紡ぎながら、数百年先の未来へと残る美を追求し続けてまいります。
馬場泰嘉

